環境と産業 ランボールギーニのサスティナブル

スーパーカーブームを牽引

 350GT、ミウラ、カウンタック、ディアブロ、ウラカンなど、歴史に残る名車を次々と生み出してきたウトモビリ・ランボルギーニ社。2000年代に入り環境への配慮にも力を入れている同社は、CO2削減に取り組むだけでなく、生産拠点周辺地域の汚染レベル監視も行うなど地域の環境保全にも目を配る。自動車メーカーとして2030年までに目指すのは、フル電動化モデルの投入だ。
 ランボルギーニ社は1963年、トラクターメーカーを運営していたフェルッチオ・ランボルギーニ氏により設立。高級スポーツカーメーカーへの転身という野心的な挑戦は成功し、創業翌年の350GTを皮切りに、次々と新モデルを市場に送り出した。ミウラ、カウンタックなど先進的なフォルムは世界に衝撃を与え、日本でも第一次スーパーカーブームを牽引する大きな柱となっている。その後もオフロード車ランボルギーニミリタリーの製造などラインナップの幅を広げたランボルギーニ社は、環境保全にも積極的な取り組みを進めてきた。

環境改善への数々の取り組み

 2009年、ランボルギーニ社は自動車分野で初となるEMAS環境認証を取得すると、2010年には工場敷地内に太陽光発電システムを設置。年間1000トンに及ぶCO2排出量削減を実現している。2011年には工場に隣接した敷地に10000本の樫の木を植え、「ランボルギーニ・パーク」をオープン。2012年に新型車開発のため竣工した建物は、クラスAエネルギー認証を取得したイタリア初の高層工業用建物となった。また2015年、工場に導入したエネルギー・暖房システムは年間約1800トンのCO2を削減するだけでなく、工場全体のCO2ニュートラル認証の取得にも繋がったという。
 その後、2021年には新たに電力を供給するバイオメタン設備を導入。これによりCO2排出量を37%から約80%(合計11000立方メートル以上に相当)まで削減することが可能となった。数々の取り組みが認められ、ランボルギーニ社は環境問題に最も熱心に取り組んでいる企業を表彰するグリーンスター賞を2021年、2022年に連続受賞している。
 前述したランボルギーニ・パークでは、2016年に養蜂場を設置しミツバチによる環境生物モニタリング活動を開始。生産拠点周辺地域の汚染レベルの監視にも取り組んできた。CEOのステファン・ヴィンケルマン氏は2022年、環境イベント「ランボルギーニ・サステナブル・デイズ」を開催し、環境改善への自社方針を改めて宣言している。

環境改善の指針「コル・タウリ」

 ランボルギーニ社が掲げる環境改善への指針は「コル・タウリ」だ。コル・タウリとは同社のシンボルである雄牛の「心臓」を意味する。コル・タウリプログラムでは最終的に車両の完全電動化を目指し、3つの段階を設定したという。2022年までは、これまでの歴史に敬意を表し内燃機関モデルの開発を実施。2023年に初となるハイブリッドモデルを発表し、2024年末までにラインアップ全車の電動化に着手していく。その後、2030年までにフル電動モデルを市場に投入する予定だ。2025年初頭からは4年をかけランボルギーニ社史上最大の投資となる15億ユーロ以上の予算を投じ、CO2排出量の50%削減を目指すという。

電動化モデルを投入し、新たな道へ

 2019年に発表された限定ハイブリッドモデルSián(シアン)FKP 37は、電動化の先陣を開いた。創立から60周年を迎えた2023年には、初のHPEVスポーツカー「Revuelto(レヴエルト)」を発表し、電動化へと本格的に舵を切っている。レヴエルトは新開発の12気筒エンジンと3台の高密度電気モーターにより、合計出力1015psを実現。内燃機関エンジンと比べても遜色はない。レヴエルト発表後となる2023年の決算では、ランボルギーニ社の販売台数は1万台を超えた。売上高は2017年の2倍以上となる26億6000万ユーロを達成し過去最高を記録。市場からの反応は上々と言える。創業以来、さまざまな挑戦を成し遂げてきたランボルギーニ社。そのエンブレムは黄金の雄牛。新たな道を進む猛牛の歩みに今後も注目したい。

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