2024-5-10

世界金融を支え続ける、最強バンカーのキャリア。

200年以上の歴史を持つ「JPモルガン・チェース」。アメリカ4大銀行の1つでもある企業の会長兼最高経営責任者を務めるのがジェームズ・ダイモン氏だ。これまでさまざまな金融機関のトップを歴任し、ニューヨーク連邦準備銀行のクラスA取締役も務めるなど、金融界で確固たる地位を築いている。TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にもたびたび選ばれるなど、メディアからの注目度も高い。世界の金融界に君臨するトップバンカーの軌跡を辿ってみたい。

JPモルガン・チェース 会長 兼 最高経営責任者 ジェームズ・ダイモン 画像提供:LGUP社

複数企業のトップを歴任後、JPモルガンへ

 ダイモン氏は株式仲買人の父のもとで育った。大学で経済学と心理学を学んだ後は、ハーバードビジネススクールでMBAを取得。卒業後はアメリカン・エキスプレスでキャリアをスタートさせている。コマーシャル・クレジット社長、トラベラーズの社長兼最高執行責任者、スミス・バーニーの最高執行責任者を歴任し、1998年にはシティグループ設立時の社長を務めるなど、そのキャリアは実に華々しいものだ。その後、ダイモン氏は2000年にバンク・ワンの会長兼CEOに就任。同行がJPモルガン・チェースに合併された後は、2006年にJPモルガン・チェースのCEOとなり、翌年には取締役会長に選ばれている

米国経済の救世主として活躍

 ダイモン氏のCEO就任からわずか3年後、金融界に大激震が走る。2008年のリーマンショックだ。米国4位の投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破産するなど、世界的な金融危機が深刻化する中、アメリカ政府の要請を受け救済に動いたのがJPモルガン・チェース。投資銀行ベア・スターンズの合併に尽力するなど、米国経済を救う一翼を担っていった。
 また、2023年には地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の買収にJPモルガン・チェースが動いたことも記憶に新しい。同年のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻後、信用不安が広がる中で行われた支援買収は、FRCからの預金流出を防ぎ破綻の連鎖を断ち切ったことでも知られる。事態の収束を迎え、ダイモン氏は「銀行システムを安定させることができたのは良いことだ」と買収の意義に自信を見せた。

地域コミュニティの活性化を

 JPモルガン・チェースの活動は銀行業務にとどまらない。国や企業、事業を展開する地域社会への支援活動にも力を入れてきた。ダイモン氏はこれを「企業責任」と呼ぶ。その一例が2013年に経済破綻したデトロイト市への支援策の実行である。同市はJPモルガン・チェースが80年以上にわたり銀行業を営んできたコミュニティでもあった。ダイモン氏はその救済に名乗りを挙げ、2014年から5年間にわたり1億ドルを拠出。周辺地区の安定化、ビジネス支援、雇用創出、住宅購入支援など多方面での支援を行ったのである。また、1800年代から拠点を置くオハイオ州への支援では、個人預金者から企業、金融機関、教育・医療・非営利団体まで計数百万ドルの資金提供を行うとともに、州内で約2万人の雇用を創出。日本においても関東大震災後や東日本大震災など災害復興支援のほか、就労やスモールビジネスの支援、雇用創出などの地域社会の発展にも力を尽くしてきた。

揺るぎない献身性がもたらすもの

 首相就任後からモディ氏は高い支持率を維持してきたが、メーク・イン・インディアの進捗は芳しくなく、課題は今も山積みだ。その大きな懸念材料の一つとなっているのが、雇用の創出とインフレ対策である。インドの人口増加は今後30年近く続くとみられており、2023年の時点で年齢の中央値を占める「中位年齢」が28歳と圧倒的に若い。毎年1,000万人前後の人口が増える中、インドの労働人口の約9割が非正規で低生産性・低賃金の状況にあることも念頭に置くべきだろう。実際に2019年まで5%台を維持していた失業率は、2020年には8%台へ上昇。その後も7%台を推移しているのが実状だ。
 就業機会が減る一方で、物価は上昇傾向にある。有力紙「インディア・トゥデイ」が2024年2月に実施した世論調査では、土地所有農家の6割が前年に比べインフレに危機感を覚えていると回答した。貧困層から中間層への支援が喫緊の課題であることは言うまでもない事実だろう。

新たな技術開発に向けて

 リーマンショックでは当時の米国大手銀行のうち、2行が廃業や身売りを余儀なくされた。そうした状況においても、JPモルガン・チェースは減益とはなったものの、赤字を計上していない。その後も堅調に業績を伸ばし、2023年には過去最高利益を達成している。成功を長期的視野でとらえ、地域の力になるというダイモン氏の言葉が、確かな結果として表れている証と言えるだろう。
 またダイモン氏が株主に向けたメッセージの中で、気候変動など環境の悪化に警鐘を鳴らしていることにも注目したい。具体的なアクションとして挙げているのが、環境対策や持続可能な社会の実現に貢献する長期的なソリューション開発だ。JPモルガン・チェースでは、2021年から2030年末までの10年間で2.5兆ドル強の資金調達を行うとしている。そして、ダイモン氏が将来の成功に欠かせないものとして位置付けるのが、AIやデータ活用などのテクノロジーの発展だ。既に決済処理などで活用を始めているほか、ブロックチェーンを基盤とした入金システムの開発も進めている。

トップバンカーが得た「成功の秘訣」

 2024年、ジェームズ・ダイモン氏はJPモルガン・チェースの会長兼最高経営責任者として任期19年目を迎えた。これまで、TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」にもたびたび選ばれるなど、周囲の好感度は著しく高い。そんなダイモン氏が、2021年に登壇したオハイオ州立大学の卒業式スピーチで成功の秘訣となる一端を語った。「失敗といかに向き合うかが、成功の最も大切な秘訣だ」、と。最強バンカーが残されたキャリアの中でどんな舵取りを行っていくのか。その一挙手一投足に世界が注目している。

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