2025-5-31

国内不動産にもたらす影響と投資家の動向

近年、中華圏投資家の日本国内不動産への活発な投資が話題となっている。日経平均株価が過去最高値を更新する中、円安などの経済状況もあり投資は活発化。不動産価格は加速度的に上昇を続けており、富裕層の関心が高まっているという報道も多々見受けられる。その背景には、中国国内の景気悪化や不動産規制などの要因もあるが、投資家たちの活動は国内不動産市場にどのような影響を与えるのだろうか。

日本で存在感を増す中華圏投資家

 コロナ禍前の2018年、国土交通省は不動産投資を行う海外投資家に向けたアンケートを行っている。同調査では海外投資家の属性や投資状況、重視する項目などを調べるのが目的だ。世界各地の不動産ファンドやアセットマネジメント会社などがその対象となる。地域別では46件の回答者の4割をアジア圏が占め、国別ではアジア地域18件の内シンガポールが5件、香港が12件、中国が1件となった。
 時を経て2024年、国内不動産への投資状況は様相が変化していることがわかる。1月に内閣府が発表した「重要施設周辺や国境離島における土地・建物の取引状況」に関する報告書では、アジア圏各国が行った320件余りの取引の内、約200件を中国が占めたのである。主な取引はマンションやアパートであり、中華圏投資家の日本国内不動産への関心の高まりが数字上でも認められてきた。

中国国内の不動産事情と投資

 中国では、土地の使用権は認められているものの、外国人も含め土地の所有権を持つことはできない。法律により全ての土地は国家所有又は農民の集団所有に属するとされているためだ。建物に関しては完全所有権が認められているが、土地の一部として扱われ、建物のみを保有・処分・担保設定することはできないのが現状である。海外からの取引に関しても非居住者や外商投資企業は中国の土地の開発権や所有権は取得不可など、厳しい制約があることでも知られている。
 2020年前後から、中国の不動産市場は未曾有の不況に陥った。大手不動産企業が経営危機に陥り、中小不動産企業にも倒産が相次いでいる。そうした国内市場の悪化を背景に、中国や香港の企業が富裕層からの信託業務を請け負う事業に参入するなど、日本への不動産投資が活発化する事情が生まれているのだ。

日本の不動産市場に投資するメリット

 冒頭で紹介した国土交通省の海外投資家向けアンケートでは、日本の不動産市場の「安定性」「 流動性」「平均的な利回り」「規模」への回答が8割を超え高い関心が見てとれる。投資対象はオフィス、レジデンスの実物不動産への関心が最も高く、地域別では東京圏や大阪圏を中心とした大都市圏が対象となっている。不動産投資における拠出金の目標運用利回りは「3%超~5%以下」が 45.9%で最も多く、回答者の半数は10年以上の投資経験を持つ。海外からの不動産投資家は、大きな利回りを狙わず長期的な視野で運用しているのだ。日本は長年金利ゼロ政策を行ってきたため、安定した利回りを期待することでき、通貨インフレ等経済変動への対策にも繋がるのだろう。「市場の堅調さ」「利回りの安定性」などが日本国内への主な投資メリットと言えるのかもしれない。

国内株価、不動産価値が堅調に回復

 そんな中、日経平均株価は、2024年に33年ぶりとなる高値を記録した。国土交通省の発表によると2024年1月時点の地価動向は、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇。不動産価格指数では、一般住宅、商業不動産(オフィスや店舗、賃貸用マンションなど)の指数が2009年以降着実に価格上昇を続けていることがわかる。特にオフィス物件や店舗、1棟単位のマンション・アパートに関しては、2010年と比較して1.6倍から1.8倍と高い上昇率がみられる。また対前年同期比で三大都市圏や南関東圏が他地域と比べ高い伸び率を示すなど、日本国内の不動産は着実に価値が向上していることが窺える。

国はインバウンド投資を推進

 日本の国内不動産投資額が2,500兆円に迫り海外からの投資も増える中、国はアジアをはじめとする諸外国の成長を取り込んでいくことが必要と判断する。2013年に公表された「不動産市場における国際展開戦略」では、その戦略の一端を窺い知ることができる。海外からのインバウンド投資については、水源地の確保や安全保障など国民生活への影響に配慮しつつも、積極的に呼び込みを行うと明言しているのである。2017年には国内不動産企業に向け「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」を作成するなど、外国人との不動産取引円滑化を目指しているのが実状だ。

不動産投資額は高水準へ

 2024年の国内不動産投資額は約4・7兆円の高水準となったが、歴史的な円安や国の政策を背景に、海外投資家の動きはより活発化の一途を辿っている。外国人投資家からの購入増加や物件価格の高騰がテレビ・新聞・メディアなどで紹介されることも増えた。冒頭で触れた中華圏など富裕層の多くが日本への投資に興味を持っているという話題も数多く目にする。  ただ一部の評論家の中には、不動産価格は高騰しているものの、中華圏など海外投資家の影響はそれほど大きくないという見方もあるという。今回の価格高騰には、資材・人件費の高騰などいくつかの要素が関係しているためだ。土地取引の総量規制など、規制も強められた現在では過去同様の経済への悪影響は起こりにくいためでもある。

不動産市場の価値構造が変化

 バブル期から30年以上が経過し、不動産市場の構造は確実に変化した。近年の不動産市場では、不動産が生み出すキャッシュフローの現在価値から不動産価格を求める「収益還元法」による価格算定がスタンダードになっている。バブル期の頃に主流だった過去の事例に基づき算定する「取引事例比較法」に比べ、将来価格への楽観的観測が生まれにくいのが現状の仕組みとも言えるだろう。不動産価値の算定を正しく行い、周囲に踊らされない目を養えば、状況の変化にも惑わされることはないのかもしれない。状況の変化に踊らされることなく、今後の不動産市場の動向にも引き続き注視していきたいところだ。

Business Issue Curation