2025-5-31
スポーツを通じたまちづくり振興の在り方。
2015年に発足したスポーツ庁が、地域のまちづくりにも力を入れているのをご存じだろうか。文部科学省ではスポーツ庁発足前からスポーツによる地域振興に注力し、2022年4月から実施している第3期スポーツ基本計画では「スポーツによる地方創生・まちづくり」を重点政策の一つとして制定。地域に合わせた仕組みづくりの推進など取り組みを強化してきた。スポーツ庁が取り組む実例を踏まえがら地域振興の在り方を考察してみたい。
地方創生とスポーツ基本計画
2022年、スポーツ庁は第3期「スポーツ基本計画」をスタートした。スポーツ基本計画は国のスポーツ行政の政策や目標を定めた5ヵ年計画である。文部科学省がスポーツ基本法を背景に、スポーツ庁設置以前の2012年から進めている取り組みだ。
第1期の計画では主にスポーツ環境の整備を実施。第2期の計画では、東京オリンピックの実施を背景にスポーツ人口の拡大を図った。2022年4月から始まった第3期計画では、第2期の総括を踏まえ、重点政策の一つとして「スポーツによる地方創生・まちづくり」を定め取り組みを加速化。スポーツを活用した地域の社会課題の解決促進と、さらなるスポーツの価値創出、ひいては各競技の振興と地域振興の好循環の実現を目指している。
各地の特色や実情を生かして
これまでスポーツによる地域振興は全国各地において、さまざまな形で行われてきた。ラグビーの国際大会を契機に合宿の誘致に成功した北海道網走市、アリーナ施設などスポーツ拠点の完成をきっかけに各種競技の誘致を開始した新潟県長岡市、三重県熊野市は海に面した地の利を生かしマリンスポーツ大会を地域振興につなげている。また秋田県は県内初のプロバスケットボールとともに地域活性化を始め、瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会(愛媛県)、大分国際車いすマラソン大会(大分県)など、国際的な大会の誘致に成功しているケースも少なくない。J1への昇格実績もある松本山雅FCを擁する長野県松本市では、サッカーを生涯スポーツとして地域振興を生かしている。
社会課題の解決と交流人口の拡大を
過疎化や経済衰退が進む地域では、人口減少は大きな社会課題の一つとなってきた。そこでスポーツ庁ではスポーツにおける地域価値向上と流入人口の増加を目指し、地域のスポーツ資源と景観、文化を組み合わせた観光コンテンツ「地域スポーツコミッション」の創出と「スポーツツーリズム」の推進に力を入れている。
2021年、茨城県笠間市では公民連携機関「笠間スポーツコミッション」を設立し、スケートボード、BMX、ブレイキンなどアーバンスポーツを中心とした競技を誘致。豊かな自然の中、各競技の大会を開催するなど順調に活動を継続することが実績を挙げてきた。和歌山県では、2022年に合気道創始者生誕の地でモニターツアー「合気道と熊野古道体験2泊3日プラン」を実施するなど、今後も合気道をフックとしたツアーの誘致を目指しているという。さらに青森県では県下を流れる木曽川を舞台にトレッキング・カヤック・サイクリングを合わせた、新スタイルのトライアスロンのモニターツアーを実施。地域の魅力創出を行っている。
スポーツによる地域振興を定着させる
スポーツを活用した地域振興の取り組みを継続していくためには、スポーツコミッションのような「仕組みづくり」が欠かせない。日本において初のスポーツコミッションが設立されたのは2011年に遡るが、それ以前にも合宿誘致などで同様の活動をしていた団体は数多い。2025年現在、全国には180近くのスポーツコミッションが開設されており、事務局を担うのは6割が地方公共団体、担当部署はスポーツ関連や教育委員会が半数を占める。主な活動は合宿やキャンプの誘致、大会やイベントの実施、プロスポーツクラブとの連携など幅広いのが特徴だ。
一方で、スポーツコミッションの年間予算は200万円未満が最も多いとされ、担当職員の新規採用予定は2割余りと資金・人材とも余裕があるとはいい難い状況である。これまでの成功事例でも「組織体制づくり」や「人材確保」を成功のポイントに挙げる団体は非常に多い。国からの支援制度も活用し、市民への啓発活動など草の根の活動も必要だろう。地域の特色を生かし、人々に愛される活動が増えることを引き続き期待したいものだ。