2025-5-31
日本の農業に光を当てて。
日本の農業は、高齢化が進むとともに就業人口の減少が続いている。田や畑など耕作地の総面積も縮小の一途を辿る中、近年はさらにTPPなど海外から輸入される農作物の影響など懸念もある。一方ではスマート農業など新技術の開発も進み、日本の農業構造は少しずつ変化を見せつつある。
日本農業の課題
国内農業の最も大きな課題は就業人口の減少と高齢化だ。農林水産省が発表した農業労働力に関する統計によると、2000年に約240万人を数えていた日本の農業従事者数は減少の一途を辿り、2024年には半数以下の111万人となった。うち80万人は65歳以上で、平均年齢は69歳と高齢化も進む。新規就農者も2015年の6万5,000人から2023年には4万3,000人余りへと減少傾向が続いている。法人・個人を含めた農業経営者は2020年の108万から2030年には54万へと半減すると予想されており、耕作地の減少も続いていくだろう。1961年に600万haあった田・畑の耕地面積も2023年には約430万haと大幅に減少。耕作放棄地や荒廃農地が喫緊の課題となっている。またTPPの影響による農産物の競争力低下も懸念材料の1つだ。
改善の一手「スマート農業」
農業従事者の減少が続く中、農作業の効率を高め生産水準と食料供給体制を維持するための活用が進むのが「スマート農業」である。スマート農業とは、ロボット技術やICT、AI、IoTなどの先端技術を用いた農業を指す。農作業における身体の負担軽減や農作業の効率化、ひいては生産性の向上や経営管理の合理化といった効果が期待される。既に全国各地で実証実験が行われており、トラクターの自動運転、収量センサーによる収穫量のチェック、トマトやピーマンなどの自動収穫ロボットなど、対象は農作業全般に及ぶ。実証プロジェクトでは、各種機器の使用で農薬散布が6割、水管理システムで8割、田植機で約2割の作業時間短縮につながっており、今後も普及が期待される分野の一つだ。
日本独自の強みが必要
スマート農業による効率化は、食料輸出額第1位のアメリカや同じく第2位のオランダでも積極的に活用されている。世界第1位の食糧輸出国であるアメリカは広大な耕作地を大きな武器に、同じく第2位のオランダは国土面積こそ日本より小さいものの、栽培品目を極端に絞り、面積当たりの収穫量を向上させている。効率化の追求だけで国内農業が真の競争力を得るかは不透明だが、日本の農業が活性化するためには、他にどのような取り組みが必要なのだろうか。
次世代が取り組む農業ビジネス
中小企業をサポートするJ-Net21や農林水産省は、農業ビジネスや農業の法人化に挑む経営者達の成功事例を公開している。「鎌倉野菜の地産地消ビジネス」「オーガニック野菜」「果物の自然栽培」「生鮮加工で地産地消」など独自の視点で農作物の「ブランド化」に成功している例もあれば、食文化を守るため法人化に踏み切る個人経営者の例もみられる。また、国際化を見据え、世界水準の農家連合で海外進出を見据える農家も紹介されている。
2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで日本の食文化への認知度は高まった。次世代農家の取り組みは、日本農業の「ブランド化」に他ならない。それを支えるのは、一人ひとりの農業へのこだわりや前向きな気持ちなのである。
効率化とブランド化
コロナ禍で産業が停滞する中、農業輸出は2割ほどの上昇を見せ、国際的な競争力の成長がみられた。日本には優れた品種開発技術もあり、紅はるかやシャインマスカットなど世界での評価が高い品種も多い。農業事業者の耕作地面積は、2005年の1.9haから2024年で3.6haへ約1.9倍に拡大。農業の集約化・効率化も進んでいる。世界遺産にも登録された日本の食文化だが、その屋台骨と言える農業はまさに欠かすことのできない産業の一つだ。官民が力を合わせ農作物の「効率化」と「ブランド化」に取り組むとき、日本の農業は新たな進化を遂げていくのだろう。