2023-05-25
イタリア家具の代表格·モルテーニの歴史を辿る。

誕生から来年で90年を迎える、イタリアの総合家具グループ「モルテーニ」。シンプルかつシャープなデザイン性に特徴がある、イタリアを代表する高級家具ブランドの一つだ。特に同ブランドの代表格でもあるウォークインクローゼットは、ひとつの「生態系」と例えられ、1cm単位までカスタマイズが可能なワードローブ、アイランド、ドロワー付きチェスト、デイ·ナイト収納等からなる多面的なシステムを構築できる。
モルテーニの始まりは1934年。イタリアのモルテーニ夫妻が自分達の手で家具を作ったことがきっかけだった。モルテーニ夫妻による家具の高い品質が評判となり、立ち上げた工房は順調に拡大していく。1955年にはスイス人の建築家、ワーナー・ブレイザーのデザインによるドロワーチェストが国際家具コンペティションにて第一位を獲得。同作品は現在、モルテーニが送り出しているモダン家具デザインの原型と言われている。1960年代からは工作機械の導入により生産性を向上させ、1975年にはサウジアラビアからの受注をきっかけに、コントラクト事業に参入。家具量産化の分野においても先駆けとなった。そして収納とベッドルーム関連の事業からスタートしたモルテーニは、オフィスメーカーやキッチンメーカーを吸収し、一大グループとして成長していくのである。
モルテーニは多くの有名デザイナーや建築家とコラボしながら、先鋭的なデザインを持つモダン家具を数多く発表してきた。それがブランドの大きな特徴でもある。同社のクリエイティブ・ディレクターを務める建築家のヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンのほか、ダイニングルームとベッドルームのコレクションを送り出しているロドルフォ・ドルドーニなど、これまで携わってきた世界的デザイナーは枚挙に暇がない。特に2005年に「ダイヤモンド・テーブル」で国際的なプロダクトデザイン賞であるレッド・ドット・デザイン賞のベスト・オブ・ザ・ベストを受賞したパトリシア・ウルキオラは、今最も注目されているデザイナーの一人と言えるだろう。ファッションから建築、インテリアの垣根を越えて活躍しており、2015年に建てられた東京·南青山に構える日本初の旗艦店は、親日家の彼女の手によってデザインされたものである。
2022年にはモルテーニ初となるアウトドア・コレクションも発表するなど、新たな展開もスタートさせた。機能的でモダンなライフスタイルの演出には欠かすことのできない上級ブランド、モルテーニ。イタリア家具の歴史を紡ぐ、新たな歩みにも目を向けていきたい。
