医療法人社団康樹会 海岸歯科室

最後の砦となる地域医療へ。

インプラントをはじめ、昨今話題のマウスピース矯正など、高度な専門知識が必要な治療が一般化しつつある歯科治療。地域密着型の歯科医院でも、幅広い領域の対応が当然のようになっている。そんな中、さらなる患者のニーズに応えたいと海岸歯科室(千葉・千葉市)を運営する医療法人社団康樹会の森本哲郎理事長は、昨年11月に本院を拡大。さまざまな分野の専門の歯科医を集め、大学病院のような機能を持たせるクリニックへと変革を始めた。地域医療への貢献を第一に考える森本理事長が見つめる未来とは――。

01 高度な専門性を発揮し地域に貢献

––貴院は千葉市稲毛区内に海岸歯科医院など三つのクリニックを開院していますが、どのような経緯で拠点を決めたのでしょうか?

歯科医を目指して進学した東京歯科大学のキャンパスが千葉市稲毛にあったことがきっかけでした。大学の近くであれば、専門性の高い症例の患者さんがいらしても連携できますから。稲毛海岸を中心として、恩返しではないですが貢献できる地域を広げていきたい。その想いが大きかったです。

––地域に貢献するためには、さまざまなニーズに応える必要がありますね。

そのため患者の治療をなるべく断らず、どれだけ対応できるかを突き詰めてきました。その結果、各分野を専門にする歯科医師を集め、大学病院のような機能を持つクリニックを展開したいと考えるようになったんです。自分のクリニックですべてを完結させたい、という想いが強くありましたね。

––昨年11月に稲毛区内にある本院を拡大し、その想いを実現しています。

私の専門であるインプラントをはじめ、口腔外科、歯科矯正など開業当時から親交があり、かつ私の考える新たな歯科医院コンセプトに共感する歯科の専門医に集まっていただきました。リニューアル以降は新規の患者数も増加して、常に移転前の4倍ほどの患者様が新たに来院されています。

––大学病院レベルの治療を提供するとあって、複数の歯科医院を受診しても症状がよくならない”歯科難民“の姿も多いそうですね。

今はセカンドオピニオンの時代ということもあり、納得できず歯科医を転々とする方も少なくありません。そういった方が当院なら治るんだろうかという想いでいらっしゃるわけですから、そこに100%応えなくてはいけないと思っています。僕が思う最終的な歯科の価値は、当院で駄目だったら諦める。最後の砦のような、そういったものを作りたいと考えています。

02 生涯現役という気持ちを忘れない

––その理想を叶えるためには、勤務する歯科医師やスタッフとの信頼関係を築くことも重要かと思います。

とくに歯科衛生士は女性、かつ若い世代のスタッフが多いですから、難しく感じることもありますが、なるべく声をかけるように心がけています。一定の距離感を取りながら、近すぎず遠すぎず。適切な距離感で和気あいあいと話せるような関係ですね。怖い院長だと思われると接しづらいですし、医師としても感情のコントロールができないのは、失格。スタッフはもちろん、患者さんに対してもどんな理不尽なことを言われても絶対に怒らない。それが僕のモットーです。

––貴院はマウスピース矯正もいち早く導入しており、千葉でもトップレベルの技術と症例数を誇り、予防治療にも力を注いでいると伺いました。

やはり専門であるインプラント、そして矯正や予防治療など、その原点にあるのは「なるべく歯を残したい」という想いがあります。とくに私の専門であるインプラントは、歯のないところに打っていくもの。人工的な歯で、そのときの口腔内の状況を悪化させないようにする、という治療です。ですが、我々の一番の理想は、患者さんの歯を一生涯全部残すこと。それは、やっぱり生まれたときから管理しないと難しいことで、そこには歯並びが大きな影響を及ぼします。顎の発育など、すべてをコントロールしたうえでの矯正治療でないと理想的な歯列を作ることができません。そう考えると矯正治療が長くいい状態の歯を残す鍵になるのでは、と感じています。

そのため私はインプラントと矯正はセットで考えるべきだと考えていますし、それは深刻化する高齢社会においての歯科治療でも重要なポイントとなっていくでしょう。昨今では80歳まで20本の歯を残す『8020運動』ならぬ、80歳まで自分の歯で肉〈29〉が食べられるようにという『8029運動』が始まっています。80歳でもお肉が食べられる口腔内にする、というのは大変ですが、そのためにもしっかりとした予防を行うのみならず、歯を口腔内に作るインプラント、そして矯正が必要になってくるわけです。その二つがなければ患者さんを救えないと考えています。

 ––今後は全身を診る医科と歯科が一緒に治療を行う必要性も高まっていく、そうした見解もお持ちのようですね。

実際に生活習慣病と言われるような疾患は、口腔内の環境が原因だと言われています。全身の健康に関する要素といった面でも、歯科の役割は重要で切り離せないところではありますが、その歯科の専門性を地域の歯科医院で高めるということは、疾患の予防や治療により深く関係することになるのではないでしょうか。医科のなかの歯科、という存在に変わっていくでしょうし、数年後には患者さん側が自分の健康に関わる専門分野の歯科の先生を選んでいく時代になっていくのではとも思っています。

––さらに理想を追求していく上で、ご自身の未来の理想像についても教えてください。

私の子どもたちも巣立って、後継者もいますから、今後はそこに引き継いでいくフェーズに入っていくでしょう。まだ10年以上先になるとは思いますが、それまでに今のクリニックをさらに進化させていきたいですね。歯科医としては、一生涯勉強が続くと考えています。生涯現役という気持ちは忘れないでいたい。そのためにも、自分が健康でいなくてはなりません。年齢を重ねても自分の歯で好きなものを食べて、イキイキとやりたいことをやっているというのが理想です。自分が健康で幸せでないと、地域貢献はもとより患者さんを幸せにできませんから。

医療法人社団康樹会 海岸歯科室

理事長

1963年生まれ。東京都出身。東京歯科大学卒業後、東京歯科大学水道橋病院歯科総合科入局。銀座の開業医での勤務を経て、91年に海岸歯科室を開院。大学生活で慣れ親しんだ稲毛の地で地域に密着した歯科医療を提供している。国際インプラント学会指導医。米国インディアナ大学歯学部インプラント科客員研究員ほか。2024年にインビザラインステータス、ブラックダイヤモンドを取得。

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