「私、失敗しないので。」との決めゼリフが話題となり、2012年から7シリーズもの作品が制作された人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」。その完結編となる劇場版が12月6日(金)より公開される。長きにわたって主人公となるフリーランスの天才外科医・大門未知子を演じ続けてきた主演・米倉涼子さんに、今回の劇場版にかける想い、そして大門未知子のように自分らしく人生を重ねていく秘訣を聞く。
01
経験を重ねていくにつれ、俳優としての質を上げていきたい、
作品に自分の色をのせていきたいと思うようになっていきました。
――2012年の放送開始から12年。集大成とも言える完結編がいよいよ公開ですね。
放送が始まった当初から12年も続けているからこそ、毎回新鮮でありたいと努めてきました。そのため決してお腹いっぱいになったから完結編というわけではなく、大団円ではないですけど、かっこよくスパっと終わるのも大門未知子っぽくて面白いのかなと感じています。
――魅力的な主人公、大門未知子を演じ続けるなかで、大事にしていた点を教えてください。
大門未知子というのは、文句は言うけどネガティブなことは一切言わないんですね。私自身は、すごくネガティブで心配症。「でも……」というのが口癖ですが、彼女にはそういうところがまったくありません。私のなかでポジティブな部分を前面に押し出して作っているキャラクターなので、そこは意識していたように思います。
――大門未知子はハマり役といったイメージがありますが、意外と正反対なところもあるようですね。
自立している強い女性像として大門未知子を挙げていただくことも多くありますが、私自身はまったくそういうタイプじゃないんですよ。彼女から影響を受けたことは自分が意識していないところではあるのかもしれないですが、私は人前で話すのも苦手なんです。彼女のように大勢が集まるところで啖呵を切ることもできません。だからこそ、そういう意味ではセリフがないと生きていけないのだなと改めて実感させられました。役者さんの中でもプロデュースや演出をされる方がいますが、「私には絶対できません!」というのが本音ですね(笑)。とはいえ、自立したい、キャリアウーマンになりたい、という夢は小さい頃から持っていたので、自分の理想を形にした大門未知子というキャラクターとしては、今回しっかりとした集大成をお見せできたかなと思います。
正直、私は体調が万全でないなかでの撮影だったので、どうにか大門未知子としてがんばりたい、という一心で向き合ったところもありました。でも、最後はピカピカと気持ちよく終わらせたいという想いは、この作品に関わった皆が持っていたことでしたし、それがしっかりと詰まった完結編になったと感じます。
――長年、第一線で活躍している米倉さんですが、走り続ける中でお仕事に向き合う姿勢など、変化を感じていらっしゃることはありますか?
デビューした当時は顔を覚えてもらうために寝る間もなく全力疾走といった日々を送っていました。右も左も分からなかったので、当時はとにかく知る、経験することが大事でしたね。それから少しずつ経験を重ねていくにつれ、俳優としての質を上げていきたい、作品に自分の色をのせていきたいと思うようになっていきました。それからやっと俳優としての覚悟ができてきたように感じます。今は、皆さんの期待を裏切らないように自分の質を高めるという意識に変わり、常にそこに焦点を当てながらお仕事を続けていくようになりました。
――ご自身が思う自分の色とは、どんな色なのでしょうか。
これまでやってきたことの積み重ねで、周りから見られている自分が今の色なのかなと思っています。なんとなく自分で「これが私」と決めつけると需要と合わなくなってくるような気もするんです。とはいえ、「イメージと離れすぎているかも」「求められているものと違うかな」と周りに振り回されるのもちょっと違うのかなとも思いますし、難しいところです。いつかは自分で自分の色を見つけたいと思っていますし、根強いイメージを少しずつはがしていけたらいいなという想いも正直あります。
02
恥ずかしがらずに人に頼る。
完全に一人で抱え込まないところが自分の強み。
――そのなかで、ご自身が強みだと思っていらっしゃるのはどんなところでしょうか。
できないことを恥ずかしいと思わないことです。分からないことがあれば、すぐに聞きます。あまり人に頼ってばかりではいけないのかもしれないですが、自分より若い子にも気後れすることなく、わからないことがあれば聞くことが大切だと思っています。昔は恰好つけていたところがあったので、恥ずかしさが先に来てしまっていたし、聞くことで嫌われるかなと怖がっていた自分もいました。しかし23歳くらいの頃から、「すみません」ばかり言っている自分に飽き飽きしてしまいました。ぐるぐる迷って考えているくらいだったら、どう思われてもいいから人に聞こうと思うようになったのもその頃からです。そこが自分にとっては大きな転機だったように感じています。ドキドキしてどうしようかな、と悩むくらいだったら一歩踏み出してみる。それが新しい道につながっていくのだと信じています。
よく何も迷ってないように見えると言われますが、分からないことは何でも聞く姿勢や、まず行動してみるというスタンスでそう思われるのかもしれません。実は意外と人の意見を求めてしまうタイプなんです。一人で抱え込まないところも自分の強みなのかもしれません。
――そんな米倉さんに憧れる方も多いと思いますが、これから社会に出る若い方や伸び悩んでいるビジネスパーソンに一言お願いできますでしょうか。
今回演じた大門未知子という役を通して、「病気を患っているけど勇気づけられました」「お医者さんを目指そうと思いました」といったお手紙をもらえるのはとても嬉しいことですし、この仕事をやっていたよかったなと感じることでもあります。でも普段の私は、大門未知子とは真逆のところばかり。被害妄想を持つこともあるし、周りをうらやましく思うこともよくあります。そんな隣の芝生が青く見えるタイプの私は、それをエネルギーにして俳優の道を歩んできました。自分の弱点を受け入れて、それを活かしていくことに集中してきたんです。誰しもが、いつも強い自分でいられるわけではないし、全部がパーフェクトなんてありえないものです。自分の色を探すのは大変ですが、自分の弱点と向き合うことも必要だと私は思っています。それが強みになることだってあるんですから。
03
■告知情報
『劇場版ドクターX』
2024年12月6日(金)より全国ロードショー
©2024「劇場版ドクターX」製作委員会
製作プロダクション:ザ・ワークス
製作幹事:テレビ朝日 配給:東宝
出演:米倉涼子 田中圭 内田有紀 岸部一徳 西田敏行ほか
米倉涼子が主演を務める人気 TVドラマシリーズの完結編が劇場版で登場。主人公となるフリーランスの天才外科医・大門未知子の誕生の秘密が明かされるとともに、シリーズ史上最大の危機が訪れる……。
俳優
米倉 涼子
Ryoko Yonekura
1975年、神奈川県出身。1992年に「第6回全日本国民的美少女コンテスト」審査員特別賞を受賞し、翌年モデルデビュー。1999年に俳優としても活動を開始。ドラマ「松本清張 黒革の手帖」をはじめとする松本清張3部作やドラマ「交渉人~THE NEGOTIATOR~」シリーズ、「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズのほか、ブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』など、主演作多数。
※本稿は2024年12月掲載時点の情報となります。