俳優

楽しみながら、歩んでいこう。

17歳の俳優デビュー以降、数々の話題作に出演してきた新垣結衣さん。観る人の共感を呼び、記憶に残る役を多数演じてきた。6月7日(金)から公開される映画「違国日記」では、両親を亡くした姪・朝(早瀬憩)を引き取り、不器用ながらも少しずつ共に歩みを進めていく小説家の高代槙生を演じる。俳優として新たな一歩を刻む新垣さんに、作品の魅力や大切にしている仕事との向き合い方を聞いた。

01

後から振り返って、「良い時間だったな」と思えるような、
仕事との向き合い方

――映画「違国日記」は同名漫画の映画化ですが、新垣さんはこの漫画をずっと読まれてきたそうですね。

 友人から教えていただいて読み始め、とても思い入れのある漫画です。なので出演のオファーを頂いたときはすごく嬉しかったですね。それと同時に、原作が大好きな分、私でいいのだろうかという不安な気持ちと、プレッシャーも感じました。それでもやってみたいという気持ちの方が強く、ありがたく受けさせていただきました。

――高代槙生役を演じるために準備されたこと、またご自身と似ていると感じたところはありましたか?

 とにかく原作を読み込みました。キャラクターの表情やどのような考えを持っているのか、原作ではこうなっていて、それをどういうふうに映画の中にセリフとして落とし込んでいるのかを確認するため常に原作を思い返す作業を繰り返しています。私から見た槙生像を、私のできる限りを尽くして演じてきたつもりです。それでも私の解釈した槙生像であり、原作の読者の皆様の中でそれぞれ解釈はあると思いますので、観た方がどう感じていただけるか、今からドキドキしています。
 似ているところは……猫背なところでしょうか。人と関わるときの距離感、持っているスタンスみたいなところは共感できるかもしれません。

――本作の見どころは、どんなところにあると思いますか?

 これは観てからのお楽しみですが、朝ちゃん(早瀬憩)です……!朝ちゃんの歌っているシーンは私も現場で見ていたのですが、胸に手を当てて思わずほうっとため息をついてしまうような、本当に浄化された心地がしました。このシーンに向けて準備をしてきて緊張している様子も見ていたので、どんなふうにやるのかな、楽しんでやれていたらいいなと授業参観のように見ていました。本当に楽しんでいて、今という瞬間のピュアが溢れていました。
 「違国日記」は原作もそうですが、各キャラクターが本当に魅力的です。それぞれ抱えているものがあり、境遇も違うし考え方も違う中で、それを否定しないでいてくれる物語だと思います。悩みを持たない方がいいとか、悩みをどうにかしなきゃということよりも、それぞれが抱えている生きづらさは事実で、それをそれぞれが受け止めながら日々を生きる姿を見せてくれる、新しく優しいアプローチをする作品だと感じています。

――新垣さんがお仕事に対して、日頃から大切にされているこだわりはありますか?

 こだわりは少ない方ですが、とにかく楽しみたいという気持ちは常に持っています。そして、できる限りのことを行うということを大切にしています。私にはそのときの自分ができる限りのことをして、役と向き合うということしかできません。それだけはこれまでずっと意識して心掛けてきました。

02

意識的に楽しむ気持ちが、
これから先を変えていくと思う

――楽しむ、というのはどんなところで意識されていますか?

 そのときそのときの現場が楽しいのはもちろんですが、例えば作品の内容的にどうしても楽しい空気にはならないこともあるかもしれませんし、やり終わった後にプレッシャーや不安にのまれそうになるときもあるかもしれません。そういうときに、大変だった、終わってほっとしたという気持ちだけじゃなく、全部ひっくるめて「でもいい時間だったな」と最終的に思えるような自分でありたい。そのためにも、ちゃんと向き合えたなと思える仕事ができるような意識を持ち続けてきました。そこが自分のやりがいにもつながってくると信じています。私は新しいことに消極的なタイプで、新しい挑戦を始めるときも怖いと思ってしまいがち。楽しんでいこうという思いがあればもう少し踏み出せて、これから先がちょっと変わるのかなと思っています。

――新しい一歩を踏み出していく方々に向けてメッセージをお願いします。

 新しいことが始まるときはエネルギッシュな気持ちがある反面、すごく体力も精神も使って疲れたり、何かあったときにすごく落ち込んでしまったりするかもしれません。でもそれも経験になると思いますし、決して無駄にはならないと思っています。夢や希望に向かっていく姿は本当に素晴らしいことで素敵なこと。そして多くの人へ勇気を与えるものだと私は思っています。ちゃんとご飯を食べて、ちゃんと寝て、ちゃんと楽しんでください。

俳優

Yui Aragaki

1988年生まれ。沖縄県出身。2007年に公開の主演映画「恋空」が大ヒットとなり、第31回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。その後の出演作に「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズやドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「獣になれない私たち」「鎌倉殿の13人」「風間公親-教場0-」、映画「ハナミズキ」「ミックス。」「正欲」など多数。早瀬憩とのW主演となる映画「違国日記」が6月7日(金)から公開。

※本稿は2024年5月掲載時点の情報となります。

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