俳優

答えがない世界の中で。

デビューしてから途切れることなく多くの作品に出演し、さまざまな役を演じながら、音楽活動やMC、ラジオパーソナリティなど幅広いジャンルで活躍を続ける藤木直人さん。新たなチャレンジを決して止めることのなかった俳優は、2023年、世界的人気を誇るハリーポッターの舞台で主演を務める。そんな彼の仕事観、変わらない信念に触れてみたい。

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キャリアが増えるにつれ見える景色が変わる。その変化を受け入れながら成長を続ける。

――若い頃と現在では、仕事に対する思いの変化はありますか?

 キャリアを重ねるにつれ後輩も増えていくものなので、彼らにとって少しでもやりやすい雰囲気を作ってあげたいという気持ちが強くなりました。頼りにしてくれるのなら何でもしてあげたい、という思いはありますね。

――ご自身が俳優業に携わっていく中で、とくに大事にしていることは何かありますか?

 俳優業で言えば、答えがない世界の中で、「とにかくいい芝居をしたい」と思って今でも手探りでやっていることは確かです。その中で大事にしているのは「役を一番理解しているのは自分でありたい」ということ。監督もプロデュサーも脚本家も、みんなトータルで考えている中で、自分だけは演じる役の目線に立って、心情の変化や気持ちの流れみたいなものに責任を持ちたいなという思いはあります。

――今回はハリー・ポッター役を演じられるということで、どんな形で役の理解に努められたのでしょうか。

 まず作品自体はオーディションを受ける前に子どもと2人で観て、オーディション後も(ハリー・ポッター役)全員のお芝居は観ておきたかったので合計3回は観ました。「原作の世界観をここまで再現しているのか」という驚きがありましたし、開演前からお客さんたちの”わくわく感“みたいなものが満ちているのが印象的でしたね。こういう作品に恵まれたことは本当に光栄だと感じています。

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「ありがとう」という感謝の言葉が、心地いい関係性を育んでいく。

――(出演する7月29日からは)トリプルキャストということで、別の役者が演じる役をご自身も演じるということになります。難しさもありそうですね。

 リプルキャストは初めての経験ですが、客観的に自分が演じる役を他の人が別の解釈で演じているのを観る機会があるというのは新鮮ですよね。もちろん難しさはあると思いますが、「そういう解釈もあるんだ」と、違うベクトルに気付けるというチャンスだなとも思っています。

――父親になったハリーが子育てに奮闘する姿も描かれるストーリーですが、共感したポイントなどはありましたか?

 子育ての大変さというところは共感しますね。うちも一番上の子が高校2年生になりましたが、大人になる過程では本人の葛藤や親との衝突もあるでしょう。そういうところは同じだなと感じます。ただ、ヒーローだったハリー・ポッターも僕らと同じようなことで悩むんだという人間らしさが描かれていることもこの舞台の大きな要素でもあるので、親子の関係が描かれるところは演じるのが楽しみです。

――改めて、これから観劇される方々へメッセージをお願いします。

 ハリー・ポッターの世界観を忠実に再現している作品なので、原作を知っている方はもちろん楽しめると思いますが、原作を知らない方も楽しめるエンターテインメントになっていると思います。ぜひ劇場にお越しください。

俳優

NAOHITO FUJIKI

1972年生まれ。1995年、早稲田大学理工学部在学中に映画「花より男子」にてデビュー。NHK連続テレビ小説「あすか」、「なつぞら」やドラマ「ナースのお仕事」シリーズ、ドラマ「高校教師」、ドラマ「夜光の階段」など、多数のドラマ・映画に出演。上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、7月29日(土)より3人の子の父親となったハリー・ポッターを演じる。

※本稿は2023年8月掲載時点の情報となります。

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