2025-5-31
AIロボティクスによる産業革命。
人工知能を搭載し、機能を拡張したロボット「AIロボティクス」の開発・活用が世界各地で活発化している。2024年にはBMW、メルセデス・ベンツ、テスラが相次ぎ自社工場に「人型ロボット」の導入を発表。AIロボットは製造業だけでなく、農業や接客業など、着実に産業全体に取り入れられつつあることが窺い知れる。業務の効率化や現場の負担軽減など、そのメリットは多いものの、更なる技術革新と産業革命の実現には何が必要とされているのだろうか。

製造業を支えるAIロボティクス
2024年1月、BMWグループは米国のスタートアップ企業Figureと提携を結び、同年8月に米国内工場で人型ロボットの試験運用を実施した。シャーシ部品の組み立て作業を完全ロボット化したのである。3月にはメルセデスベンツが自社工場内で人型ロボットの試験導入を行うと発表し、製造工場の試運用を開始。身体への負担が多い作業や単調な反復作業の自動化を目指しているという。また、テスラは2021年から自社でヒューマノイド型ロボットの開発を進めてきた。すでに試作機の導入を終え、2025年に自社工場で1,000台以上を稼働させると表明したところである。今後は製造業向けロボットの販売も視野にいれていくのだという。
他産業にも広がる活用
もちろん製造業以外でもAIロボティクスの活用は進んできた。今後、人手不足が予想される農業分野では、収穫作業の自動化を目指し、特にイチゴやピーマン、トマトといった作物の自動収穫ロボットの開発が現実味を帯びている。収穫ロボットは栽培棚の間を移動し、画像認識とAI技術を活用しながら作物の状態を確認することで、出荷に適した作物を収穫して容器に入れるという流れだ。
そして人手不足への懸念は、飲食業や物販業も同様である。ファミレスやコンビニではAIロボットによる清掃や食事の運搬が既に行われており、大手家電量販店や百貨店では接客への活用が始まっている。物流業界ではAIとロボットを利用し、在庫管理や配送商品のピッキング、配送などの業務改善が進められてきた。製造から物流、販売、管理に至るまで、AIロボティクスは産業全体に浸透し、産業に変革を起こしつつある現状だろう。
情報社会が生み出す産業革命
18世紀、イギリスに端を発した産業革命は、時代のイノベーションとともにそれまでにない商品やサービスを生み出してきた。18世紀の第1次産業革命では石炭エネルギーが原動力となり、蒸気機関車や紡績機が経済成長を下支えしている。19世紀の第2次産業革命では石油エネルギーをもとに自動車や各種工業製品が続々と市場に流通し、20世紀後半ではインターネットが世界を席巻。その後のコンピュータや通信機器、半導体のさらなる発展をもたらしていった。情報通信の発展とともにビッグデータやIoT、人工知能などが発展した現在は、「第4次産業革命」の時代を迎えたと言える。2021年には欧州委員会が新たなコンセプトとして「第5次産業革命(インダストリー5.0)」を提唱するなど、新たな時代の模索も始まっている段階だ。

各国がAIロボット開発に注力
こうした状況を背景に、世界各国が科学技術の社会実装を目指し、米国やEUをはじめとしたAIロボティクスの開発に鎬を削っている。特に米国企業が中心となって推し進めてきたAIロボットの研究開発は世界を牽引してきた大きな功績と言えるだろう。実際にOpen AIやGoogleなどのソフトウェア企業がA I技術のロボット活用を推進するほか、AIロボティックスのスタートアップ企業も数多く誕生している。
そうしたソフトウェア企業の支援を受ける形で、既存のロボット製造企業もA Iロボットの開発に力を入れ始めた。欧州や中国もA Iロボットの研究開発を国家レベルの戦略として位置付けており、巨額の投資や人材育成を実施。特に中国は研究開発数や論文数で米国と1、2位を争う成果を挙げている。

世界有数の日本のロボット技術
国内に目を転じてみると、日本は世界で最もロボット導入と開発が進んだ国の一つであることがわかる。国際ロボット連盟(IFR)の調査によると、2023年時点で日本の産業用ロボットの市場シェアは世界の46%を占めており、中国に次ぐ世界第2位となっているのだ。日本はロボット開発のハード面では一日の長があると言えるのかもしれない。
その一例として国内ロボットメーカー各社も技術革新を進めており、NECや安川電機では周囲の環境変化や状況に合わせ、自らの判断で最適な作業を行うロボット開発を進めてきた。また国内最古の産業ロボットメーカーである川崎重工業は、熟練技術者の動きを再現し、技能を伝承する新ロボットシステムを開発。各社ともに、これまで築き上げてきた技術をAI技術の活用でさらに高めている。
技術の融合で新たなステップへ
