2024-05-31
ドローン活用の有効性と公益性
日本国内におけるドローン市場は、2022年度に3000億円を超えた。今後も導入は加速し、2024年度は4000億円、2028年度には9000億円を超えると予想されている。ドローンの活用範囲は物流業界から農林・水産業界、警備・防犯業界まで幅広い。そんな中、より公益性が高い分野への活用として注目が集まるのが「災害・防災分野」「調査・測量分野」だ。国や自治体も導入や事象実験を進めるドローン活用の有効性を探ってみたい。

導入が進む、災害・防災分野
愛知県豊橋市では、2017年にドローン飛行隊「RED GOBLINS」を発足した。きっかけは創設メンバーの一人が鬼怒川の堤防決壊災害を目の当たりにしたことである。市役所の各課職員30名余りが所属し、平常時には市の広報や記録、災害時には被災情報等の速やかな収集を行うものだ。2022年には台風15号の影響で海岸に漂着する流木の情報調査、2023年には台風7号接近に伴う被害調査など、ドローンの導入は確実に成果をあげている。
同様の取り組みは各地でも進む。静岡県焼津市では2016年、防災を目的としたドローン航空隊「ブルーシーガルズ」を結成。消防隊とも連携し、火災現場などで情報収集を行ってきたという。2016年に駒本地震を経験した熊本県南小国町では、防災力・災害対応能力の強化を目的としてドローンを導入。災害に備え、防災訓練などでの活用も開始している。また神奈川県大和市消防本部では、大規模災害の発生を想定し全隊員をパイロットとして育成。県内の合同訓練にもドローン隊を派遣するなど活用に積極的だ。
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鬼怒川の堤防決壊を記録した空撮写真(提供:国土交通省関東地方整備局)
インフラ整備や測量にも
インフラ整備など、調査・測量分野でもドローンの活用が進んでいる。国土交通省では道路局、港湾局、気象庁など各分野においてドローンを導入しており、道路や河川などの巡視のほか、橋梁の定期点検においてもドローンを点検支援に使用。作業の効率化や省力化を図っている。ドローンは上空から俯瞰で状況把握ができるため、危険な状況の早期発見に役立つだろう。また測量では地形の3Dデータが取得可能になり、点検制度の高度化にもつながった。特に大きな力を発揮するのが、地震後の被災状況確認調査、火山噴火口など危険を伴う場所の観測・監視といったケースである。短時間で安全に広範囲を撮影・測量できるドローンは、公益性が高い業務に非常に有効と言えるだろう。

Matrice 300 RTK+Zenmuse P1で計測したものをDJI Terraに読み込んだ例。
高い公益性の実現を
遡ること2022年、国は電波法などドローンの運営に関わる法律を改正した。機体登録の義務化や国家資格、飛行エリアなどに関して、各種規定を設け安全性を担保するとともに、目視外飛行が可能な対象を広げ、災害対応やインフラ整備にも新たな道を開いている。
これまでは、ダムや斜面の点検・測量など、インフラ整備では人手に頼ってきた業務も少なくない。国土交通省ではそうした各種業務へのドローン導入の実証実験や手引きの作成も進めているところだ。またドローンに加えAI技術も活用し、さらなる省力化・効率化・安全性を実現したい考えだ。
災害大国とも呼ばれる日本では人口減少も続く。ドローン技術を活用した災害対策やインフラ整備は喫緊の課題であり、今後の進展が急がれることになるだろう。