2024-11-30
社会に貢献し続ける、あの企業の周年を祝して。
2024年、サントリーが京都郊外にある「山崎蒸溜所」で、初の国産ウイスキー製造を開始してから100周年を迎えた。サントリーは、サントリーウイスキーが紡いだ100年の歴史を紹介する公式サイトを公開。現在に至るまで同社に息づいてきたチャレンジング・スピリットや、前例のない日本ウイスキー開拓の道を辿ってみたい。

日本人好みのブドウ酒の誕生
サントリーの歴史は1899年、鳥井信治郎氏による鳥井商店の開業に端を発する。開業前は薬品とともに洋酒も取り扱っていた薬種問屋であり、丁稚奉公をしていた信治郎氏は早くから西洋文化に馴染んできたという。商売を始めてからも神戸で洋酒の輸入を営むセレース商会との交流を持ち、本場のブドウ酒を買い付けて販売するものの酸味が日本人の好みに合わず、その売れ行きは芳しくなかったようだ。その後信治郎氏は、日本人の舌に合うように香料や甘味料を調合した「向獅子印甘味葡萄酒」を発売。そこで満足することはなく、改良を重ねた「赤玉ポートワイン」を発売するに至っている。信治郎氏が自ら先頭に立って行う懸命な販売活動の成果もあり、徐々に認知度が高まりシェアを拡大していったという。赤玉ポートワインの成功は、後のウイスキー作りの原資となっている。
そして1921年、信治郎氏は「株式会社寿屋」を創立し、日本の洋酒文化を切り拓くべく万全な体制を整えていく。
日本産ウイスキーを実現するために
信治郎氏は「日本人の繊細な味覚に合うウイスキーをつくりたい」という強い思いを持ち、ウイスキーの製造に適した地を日本中で探し回り、京都の南西にある山崎の地に行き着くことになる。山と川に挟まれた山崎は良質な水と程よい湿度があり、ウイスキーの熟成に非常に適していたからだ。この地こそふさわしいと拠点を定めるが、ウイスキーの市場が日本にまだ存在しない中でのウイスキーづくり。加えてとてつもない資金を必要とする事業に対して、当時の役員からは猛反対を受けたと言われている。信治郎氏はそれらを押し切り1923年、山崎蒸溜所の建設に着手。本場スコットランドで学んだ竹鶴政孝氏が所長に就任し、ウイスキーづくりを1924年に開始した。
日本で前例のないウイスキー製造は難航し、さらに熟成に時間が必要なためすぐに商品の出荷ができず、ウイスキーづくりは出資者たちから常に厳しい視線にさらされていたという。そんな中、満を持して初の国産ウイスキーを完成させることとなる。信治郎氏は商品の名前を「サントリー」、鳥井の「トリ」と、赤玉ポートワインのラベルにデザインされた赤い玉、つまり太陽「サン」から命名し、1929年に国産ウイスキー第1号として「サントリーウイスキー白札」を発売した。
世界に広がる日本ウイスキーの魅力
「サントリーウイスキー白札」を発売した当初は、世間からの評価は決して良いものではなかったという。ウイスキーの香りづけのために焚くピートの焦げ臭さが、ウイスキーに馴染みのない日本人には受け入れることが難しかったのだ。低調な売れ行きは寿屋の経営を悪化させたが、信治郎氏はビール事業やジュース事業など多角経営によってウイスキー事業を存続させている。そして信治郎氏はどこへ行くにもウイスキーのポケット瓶を持ち歩き、会食の場で飲んでもらったり、偶然出会った街の人にも試飲してもらったという。さまざまな場面で意見をもらっては、ブレンドの勉強を重ねて改良に励んだ。
そして1937年、「サントリーウイスキー角瓶」を発売。日本人の舌に合うこのウイスキーは好評を持って迎えられ、今もなお続くロングセラーとなっている。戦後間もない1946年当時はモノ不足の時代を迎えることもあったが、信治郎氏はいつの時代も「安くてもしっかりした品質のお酒を飲んでもらいたい」と、「トリスウイスキー」を発売。大衆の声にも応えていった。1950年には、1940年以来発売を見合わせていた「サントリーウイスキーオールド」も発売している。
そして1962年、信治郎氏は83歳でこの世を去った。二代目社長として次男の佐治敬三氏が跡を継ぎ、信治郎氏が生み出した日本ウイスキーをより広く愛される商品に育てあげていく。1963年には株式会社寿屋からサントリー株式会社と社名を変更し、敬三氏は「山崎蒸溜所」とは異なる個性のあるウイスキーを求め、山梨県北杜市に「白州蒸溜所」を建設。職人たちが21年の時間を注ぎ込み、「シングルモルトウイスキー白州」を完成させている。1984年に「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」、1989年には創業90周年記念ウイスキー「サントリーウイスキー響」を発売。「山崎」「響」「白州」を始めとするサントリーのウイスキーは海外での認知をますます高めていき、世界中で愛されるサントリーウイスキーのファンを獲得していくこととなった。多くの人々の情熱と長きわたる研鑽が蓄積されたサントリーウイスキー。この度の100周年を祝し、改めてその歴史の奥深さを味わってみてはいかがだろうか。
