2024-5-31

世界遺産で足るを知る。【カナダ モレーン湖】

 カナダ・アルバータ州に位置する、世界自然遺産に認定されたバンフ国立公園。その広大なエリアの一角にあるモレーン湖は、氷河を元に形作られた湖だ。ロッキー山脈の山並みをバックにエメラルドグリーンに輝き、カナダの自然を感じさせる著名な風景の一つとして知られている。かつてはカナダ紙幣にも描かれたこともあり、「宝石」と讃えられるほど。観光客を惹き付けてやまないモレーン湖の魅力を紹介したい。

氷河が生んだ神秘的なブルー

 モレーン湖は標高1,884メートルの高地に位置する。広さは0.5㎢ほど。決して広くはないが、ターコイズブルー(トルコ石の青色)の水をたたえた風景は、訪れる観光客を魅了し続けている。湖の周囲に広がるのは「バレー・オブ・ザ・テン・ピークス」と呼ばれる3,000メートル級の山々。10カ所もの峰が湖を取り囲み、鏡のような湖面には周囲の風景が映し出される。
 まるで湖に絵具を流し込んだような紺碧の水だ。その訳は、湖が出来上がった環境に起因するという。氷河に閉ざされた周囲を囲む山々から流れ込む雪解け水には、氷河の融解時に削り取られた岩の粉(ロックフラワー)が含まれる。水に溶け込んだそれらの鉱石成分に光が反射し、不思議なまでの青い色をつくり出すのだ。湖面の色は一定ではない。時期や日の光など環境の変化でその色を変える。

カナディアン・ロッキーの自然を満喫

 豊かな自然に囲まれたモレーン湖の代表的なアクティビティが、カナディアン・ロッキーの自然を巡るハイキングだ。湖の周囲には数々の遊歩道(トレイル)が整備されており、多様な楽しみ方を提案してくれるだろう。カルガリーやバンフなど、周囲の街からは日帰りツアーも用意されている。
 もっともポピュラーなコースは、駐車場から伸びるロックパイルトレイル
(Rockpile Trail)だ。総延長は300m、高低差24mとコンパクトなため、ハイキング初心者や観光客でも利用しやすい。岩の間に敷かれた階段を進むと、コースの終点はモレーン湖を望む絶好のビューポイントとなっており、多くの来訪者が絵葉書のようなその風景を写真に収める。
 ほかにも湖畔にある桟橋からは、ターコイズブルーの湖面にカヌーを漕ぎだすことができるアクティビティも。湖を往復する所要時間は1時間ほどだ。青い水をただよう、ゆったりとした時間を堪能できるだろう。

湖面を眺めながら過ごす一夜も

 モレーン湖の湖畔には、ログハウス風の宿泊施設モレーン レイク ロッジが隣接する。早朝の陽光や夕闇に包まれるモレーン湖の姿を楽しみたいのであれば、湖畔のロッジへのステイもおすすめだ。全ての部屋が湖と周囲の山々を眺めることができる絶好のビューポイントとなっている。ロッジ内のダイニングでは、湖畔の風景を眺めながらサーモンをはじめとした魚介類、アルバータビーフ、地元産の野菜など、カナダの素材をふんだんに使用した多彩なコースメニューが揃う。

ゆったりと「足る」を知る旅を

 1,800メートルオーバーの高地にあるモレーン湖は、冬季には積雪量のため道路が封鎖されてしまう。道路の規制が解除されるのは、雪解け後の5月下旬頃。つまり6月から10月までがモレーン湖の観光シーズンとなる。
 日本からは空路で10時間程。カルガリー空港からレイクルイーズやバンフなどへ移動すれば、バスやツアーでアクセスできる。但しモレーン湖では、2023年から個人の自家用車の乗り入れは原則禁止となった。時間が許せば、空路でバンクーバーへ行き、大陸横断鉄道で近隣の町を目指すのもいいだろう。
 カナダの自然と隣り合わせ、ゆっくりと移ろう時間を堪能するひと時は格別の贅沢だ。時間や天候とともに表情を変えるその風景は、人の手では作り出すことのできない美しさを有する。満ち足りた時間へと誘ってくれるモレーン湖の雄大さを体感してみてはいかがだろうか。

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