2025-5-31

世界遺産で足るを知る。【ヴェネツィアとその潟】

 2024年現在、イタリアには60ヶ所に及ぶ世界遺産が登録されている。その中でも、水と人の暮らしが融合している唯一無二の存在として、イタリア共和国北東部に位置するのが「ヴェネツィアとその潟」(Venice and its Lagoon)だ。ヴェネツィアはかつて海上貿易の中心地として繁栄した街であり、現在でも14世紀の建物が現存するなど文化的な価値も高い。世界に名高い「水の都」が内包する魅力の一端をお伝えしたい。

潟の上に建立、海運都市として発展

 ヴェネツィアの歴史は6世紀ごろ、人々がアドリア海沿岸の潟に都市を作ったことが始まりとされる。次第に港湾都市として発展し、10世紀にはヴェネツィア共和国を建立。東西貿易の中心となるなど繁栄を極め、14世紀ごろには「アドリア海の女王」と称されるまでになった。
 約120の小さな島々から成るヴェネツィアは、広大なエリアには湿地、干潟、浅瀬、砂丘など多様な自然が混在。街には計180本近くの運河が張り巡らされ、その間を無数の橋が結ぶ世界でも希少な観光地だ。1987年には、その価値が認められヴェネツィアンガラスで有名なムラーノ島や映画「ヴェニスに死す」の舞台となったリド島などとともに世界遺産に登録されたのである。

古の面影を残す美しい街並み

 ヴェネツィアには多種多様な歴史的建造物が点在している。ナポレオンが「世界で最も美しい広場」と絶賛したサン・マルコ広場をはじめ、11世紀から数百年をかけ建築されたサン・マルコ大聖堂、かつてヴェネツィア共和国の政庁として使われたドゥカーレ宮殿など、どれも貴重な建築物ばかりだ。街を二分し流れる大運河「カナル・グランデ」の両岸には、ロマネスク、ゴシック、バロック、ルネサンスなど異なる時代・建築様式の建物が調和し、美しい街並みを見せてくれる。リアルト橋など運河にかかる橋たちも風景の美しいアクセントになっており、まるで水面に浮かんでいるかのような風景と相まって、街全体が美術館のように美しい。

ヴェネツィア独自の飲食店で美食体験

 古い街並みの中には、飲食店「バーカロ」など、地元民で賑わう飲食店が軒を連ねる。バーカロはお酒と軽食が楽しめるバルとして有名だが、19世紀頃からヴェネツィア独自の食文化として定着している。海に面したヴェネチアでは、イカ墨のスパゲティやリゾットのほか、あさりやアンチョビのパスタなど日本でもなじみのある食材も多い。イワシの南蛮漬け、干し鱈のペーストといった魚介類のメニューも人気定番料理の一つだ。ほかにもヴェネツィア風レバー炒め、トウモロコシの粉を練ったポレンタといった名物メニューもあり、食の宝庫としても名高い街である。

世界最古の芸術とカーニバルの街

 近年、ヴェネツィアは「文化・芸術都市」としても脚光を浴びている。中でも1895年に発足したヴェネチア・ビエンナーレは世界で最も長い歴史を持つ国際美術展だ。現在では美術のみならず建築・音楽・映画・演劇・舞踊といった幅広いジャンルも設けられ、総合的な芸術祭として世界の注目を浴びるようになった。
 また、世界屈指の祭典と言われているのがヴェネチア・カーニバルだろう。参加者が華麗な仮面と衣装に彩られ参加するこの催しは、地域の祝祭として12世紀に始まったものである。現在では国際的な観光イベントとして再構築され、世界三大カーニバルとの呼び声もあがる。

水の都ならではの「船旅」を

 ヴェネツィア本島には乗用車やバスの乗り入れが禁止されており、交通の足として活躍するのが水上交通機関だ。ヴァポレットと呼ばれる水上バスや水上タクシーは市内の主要観光地を結んでおり、移動の中心となる。またヴェネツィア風物詩の一つとして知られるゴンドラは今も観光用として旅行者にも重宝され、ゴンドリエーレと呼ばれる船頭が漕ぐ船旅は狭く入り組んだ運河をゆったりと巡り、歴史をゆるやかに堪能することができるだろう。ヴェネツィア本島へは市内にあるヴェネツィア・テッセラ空港(通称マルコ・ポーロ国際空港)から路線バスで30分ほど。ほかにも水上バスや水上タクシーの直行便も運行されている。世界でも異彩を放つ水の都ヴェネチアとその潟。ここでしか堪能することのできない優雅な船旅で、新たな出会いと発見があるかもしれない。

写真提供:ヴェネチア観光局

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