2023-05-25

写真で見る世界遺産。【ハルシュタット】

オーストリア ハルシュタット

 オーストリアが誇る世界文化遺産の一つ、ハルシュタット。アルプスの山麓を背景に、湖畔に佇む教会や街並みの風景は絵葉書やカレンダーにもなるなど、余りにも有名だ。映画「サウンド・オブ・ミュージック」や海外ドラマなどのロケ地としても知られている。その歴史は古く先史時代まで遡り、青銅器時代から鉄器時代にかけた文化を表す「ハルシュタット文化」の語源にもなっている。
 ハルシュタットはオーストリアのザルツブルク東南、湖が点在するザルツカンマーグート地方に位置する美しい湖畔の町だ。主なアクセス方法は電車とバス。電車ではハルシュタット駅を下車後、町に行くためにハルシュタット湖を渡る。約5分の船旅だ。町の人口は700人ほど。2995mを最高峰とするダッハシュタイン山の頂きに位置するハルシュタットの標高は500〜800m。年間を通じて降水量は多く、厳寒期には平均気温が零下となることもある。1997年、ハルシュタットは南に位置するダッハシュタイン山地や周辺地域とともに「ザルツカマーグート地方のハルシュタットとダッハシュタインの文化的景観」として、ユネスコの世界文化遺産に登録された。評価されたのは、美しい景観とその歴史的価値に他ならない。

岩塩坑は世界最古、徐々に観光業へとシフト

 ハルシュタットの「ハル」はケルト語の塩、「シュタット」はドイツ語で場所を表す。名前の通り塩が多く産出される場所だ。古くから岩塩採取地として栄えており、塩坑の歴史は7000年に及ぶ。岩塩採取と並行し、1920年代からは塩鉱山の見学を開始。参加者はケーブルカーでアクセス後、坑内を徒歩や木製の滑り台、トロッコと、坑夫たちが実際に使用していたスタイルで見学を行う。塩の生産は現在も行われているが、岩塩坑見学ツアーの開始を皮切りに町の産業は徐々にツーリズムへと移行してきた。ウィーンやザルツブルグからの日帰りツアーのほか、もちろん宿泊も可能。宿泊者数は2003年の5万人余りから、2014年には10万人へと倍増し、2017年には町の人口の20倍近く、13万人以上の観光客が訪れたという。

大自然と人間の歴史が共存

 世界で最も美しい湖畔の町とも言われるハルシュタット。湖を見おろす高台にはカトリック教会と礼拝堂が鎮座し、旧市街の中心にあるマルクト広場の周りには家々やホテル、土産物屋が立ち並ぶ。街並みには石造りの建物だけでなく古い木造建築物も混在し、歴史が感じられる街並みだ。町の名物はハルシュタット湖で獲れる淡水魚ライナンケ。オーストリア名物仔牛のカツレツやザッハトルテなどと共に、湖畔沿いのホテルやレストランで供されている。歴史を楽しむのであれば、町の中心部にあるハルシュタット博物館に足を運ぶのもお薦めしたい。2002年にリニューアルオープンし、石器時代、青銅器時代、ハルシュタット時代からローマ時代、現代まで、各種の出土品を展示し7000年にわたる歴史を凝縮している。また景観を楽しむのであれば、湖畔を中心とした散策が定番だ。町からはハルシュタット湖を周遊する観光船が運行し、ハルシュタット塩坑へ向かう途中の展望橋からは町を一望できる。至るところが絶好のフォトスポットだ。更にケーブルカーで足を伸ばせば、クリッペンシュタイン山にある氷穴、オーストリア最大級の大洞窟の観光も楽しめる。散策から歴史探訪、アドベンチャーまで、ハルシュタットの楽しみ方は多種多様。大自然と人間が長い歴史の中共存している稀有な場所だと言えるだろう。

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